
設立から20年、株式会社NAaNAは数多くのお客様のホームページ制作に携わり、Webの進化とともに歩んでまいりました。長きにわたる制作現場の中で私たちが確信していることがあります。それは、「ただ美しいだけのデザインでは、ビジネスの課題は解決できない」ということです。
お客様から寄せられるご相談の多くは、「古くなったサイトを綺麗にしたい」というご要望から始まります。しかし、じっくりとお話を伺うと、その背景には「採用活動がうまくいかない」「新しい顧客層に技術力が伝わらない」といった、経営に直結する切実な悩みが隠されていることがほとんどです。
本記事では、ある老舗メーカー様とのプロジェクトを例に挙げ、私たちが実践する「クライアントを魅了する提案型Webデザイン」の裏側を、担当スタッフの目線で具体的にご紹介します。
長年培ってきた「伝統」という強みが、時代の変化とともに「古臭さ」という足枷になってしまっていた企業のWebサイト。その課題を徹底的なヒアリングで浮き彫りにし、どのようにして「革新」という新たなイメージへ昇華させたのか。そして、リニューアル後に問い合わせや採用応募が急増した背景には、どのようなデザイン戦略があったのか。
単なる見た目の変更ではない、企業の未来を変えるためのWeb制作プロセスと、その劇的なビフォーアフターの物語をぜひご覧ください。これからWebサイトのリニューアルを検討されている方や、Web活用に悩みをお持ちの方にとって、解決のヒントとなれば幸いです。
1. 老舗メーカーが抱えていた採用難の壁、徹底的なヒアリングで見えてきたWebサイトの隠れた課題とは
創業から半世紀以上続くある精密部品メーカーは、世界トップシェアを誇る技術力を持ちながら、深刻な若手エンジニアの採用難に直面していました。求人媒体に広告を出してもエントリーが集まらず、集まったとしても企業文化とのミスマッチによる早期離職が続くという悪循環に陥っていたのです。クライアントである経営陣は当初、「Webサイトのデザインが古いから、今風のおしゃれな見た目に刷新してほしい」という表面的なリニューアルを希望していました。しかし、提案型のWebデザイナーとしてプロジェクトに関わる以上、言われた通りのビジュアルを作るだけでは根本的な解決にはなりません。
そこで実施したのが、経営層だけでなく、入社3年以内の若手社員や現場のエンジニアを含めた多層的なヒアリングです。「なぜこの会社を選んだのか」「入社前と後のギャップは何か」「日々の仕事で何にやりがいを感じているか」を徹底的に掘り下げました。すると、外部からは「堅実で保守的」と思われていた企業イメージとは裏腹に、現場では若手が裁量を持って新技術に挑戦できる風土があることが判明しました。
ここで浮き彫りになったWebサイトの隠れた課題は、単なる「デザインの古さ」ではありませんでした。最大の問題は、求職者が最も知りたい「現場の熱量」や「具体的な働き方」が全く発信されておらず、代わりに社長の理念や歴史沿革といった静的な情報がトップページを占拠していたという「情報優先度のミスマッチ」にありました。さらに、アクセス解析を行うと、求職者の8割以上がスマートフォンから閲覧しているにもかかわらず、既存サイトはPC表示にしか最適化されておらず、エントリーフォームへの到達率が著しく低いことも明らかになりました。
クライアント自身も気づいていなかった「自社の本当の魅力」と「ユーザー体験(UX)の欠陥」をヒアリングによって言語化し、課題として提示すること。これこそが、信頼を勝ち取る提案型Webデザインの第一歩となります。見た目を整える前に、まずは情報の構造改革とターゲットへの訴求ポイントを整理することが、採用数アップという成果につながるのです。
2. 企業の強みを「伝統」から「革新」のイメージへ昇華させる、ターゲットの心を掴むためのデザイン提案プロセス
創業から長い歴史を持つ企業や、特定の業界で確固たる地位を築いているクライアントに対し、単に「おしゃれなサイト」を提案するだけでは不十分です。彼らが抱える最大のジレンマは、長年培ってきた「信頼と実績(伝統)」を維持しつつ、時代に取り残されないための「先進性(革新)」をいかにアピールするかという点にあります。
Webデザイナーやディレクターが提案段階でこの課題を解決し、クライアントを唸らせるためには、論理的かつ情緒的なデザインプロセスが必要です。ここでは、古い企業イメージを一新し、新たなターゲット層の心を掴むための具体的なリブランディング提案のステップを解説します。
1. 「守るべき核」と「変えるべき皮」の選別
まず最初に行うべきは、クライアントへのヒアリングを通じて、企業のDNAといえる要素を抽出することです。多くのデザイナーが犯しやすいミスは、過去のすべてを否定し、全く新しいデザインを押し付けてしまうことです。これではクライアントの共感は得られません。
提案書には、以下の分析を含めることで説得力が増します。
* 守るべき核(Core Value): 創業の精神、品質へのこだわり、顧客対応の誠実さなど、時代が変わっても変えてはいけない哲学。
* 変えるべき皮(Expression): ロゴの視認性、Webサイトの配色、フォント選び、写真のトーン&マナー、ユーザーインターフェース(UI)。
この2つを明確に区分けし、「御社の素晴らしい伝統(核)を、現代のユーザーに正しく届けるために、表現(皮)をこのようにアップデートします」という文脈で提案を行うことが重要です。
2. ターゲット・インサイトに基づいた「視覚言語」の翻訳
「革新」をイメージさせるためには、ターゲットユーザーが何をもって「新しい」と感じるかを理解する必要があります。
例えば、BtoBの老舗製造業が、スタートアップ企業や若手エンジニアを採用したいと考えている場合、重厚感のある明朝体や濃紺の配色は「堅苦しい」「古い」と受け取られる可能性があります。そこで、以下のような視覚言語の変換(翻訳)を提案します。
* タイポグラフィ: 視認性の高いサンセリフ体(ゴシック体)を採用し、可読性とデジタルデバイスでの親和性を高める。欧文フォントにはFuturaやHelveticaなどのジオメトリックな形状を取り入れ、論理的かつ先進的な印象を与える。
* カラーパレット: 企業のコーポレートカラーをベースにしつつ、彩度を高めたアクセントカラーやグラデーションを取り入れ、デジタル空間での「発光感」や「エネルギー」を表現する。
* ホワイトスペース(余白): 情報を詰め込むのではなく、大胆に余白を設けることで、自信と余裕、そして洗練された現代的な美意識を演出する。
3. 静的な情報から「体験」へのシフト
Webデザインにおいて「革新」を最も強く印象付けるのは、動き(モーション)とユーザー体験(UX)です。
提案の際は、単なるページのデザインカンプを見せるだけでなく、Adobe XDやFigmaなどのプロトタイピングツールを用いて、実際の挙動を動画やデモで見せることが効果的です。
* マイクロインタラクション: ボタンをホバーした時の反応や、ページ遷移時のスムーズなアニメーションは、ユーザーに「細部まで配慮された先進的なシステム」という印象を与えます。
* スクロールテリング: スクロールに合わせて企業の歴史から未来へのビジョンが展開されるような演出は、ユーザーを物語に引き込み、感情的なつながりを生み出します。
4. 実際の言葉で「未来」を語る
デザイン案には必ず、キャッチコピーやダミーテキストではなく、ターゲットに刺さる具体的なメッセージ案を添えてください。「伝統を未来へ」といった手垢のついた言葉ではなく、その企業がどのような技術で社会を変えようとしているのか、具体的なベネフィットを提示します。
デザインとは見た目を整えることだけではありません。企業の持つポテンシャルを可視化し、Webサイトを訪れたユーザーが「この会社となら新しい未来が描ける」と確信できるような体験を設計することこそが、プロフェッショナルなデザイン提案の真髄です。
3. リニューアル後に問い合わせと採用応募が急増、戦略的なWebデザインがもたらした劇的なビフォーアフター
Webサイトのリニューアルにおいて、多くのクライアントが抱える本質的な課題は「デザインの古さ」そのものではなく、そこから生じる「機会損失」にあります。単に見栄えを整えるだけの表層的なデザイン変更では、ビジネスの成果を大きく変えることはできません。ここでは、具体的な戦略に基づいたWebデザインが、いかにして企業のポテンシャルを引き出し、劇的な成果をもたらすのかを解説します。
例えば、高い技術力を持ちながらもWeb活用が遅れていたBtoB製造業の事例を見てみましょう。リニューアル以前のWebサイトは、テキスト中心で製品スペックが羅列されているだけであり、スマートフォンでの閲覧にも対応していませんでした。その結果、新規顧客からの問い合わせは月に数件程度にとどまり、求人情報を掲載しても「企業の魅力が伝わらない」という理由で若手層からの応募が皆無という状態が続いていました。
この状況を打開するために提案したのは、ターゲットユーザーの心理に基づいたUI/UX設計(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)です。まず、顧客向けには「何ができる会社か」を一目で理解できるよう、ファーストビューに現場の臨場感ある動画を採用し、技術力を直感的に訴求しました。さらに、製品ページから問い合わせフォームまでの導線を見直し、ユーザーが迷わずに相談できるようCTA(行動喚起)ボタンの配置を最適化しました。
一方、採用面での課題解決に向けては、特設の採用サイトを構築し「社員の顔が見えるコンテンツ」を拡充しました。実際に働くスタッフのインタビューや、入社後のキャリアパスを視覚的に表現することで、求職者が自分が働く姿を具体的にイメージできるようにデザインしました。また、企業のカルチャーや福利厚生をインフォグラフィックで分かりやすく伝えることで、安心感と信頼感を醸成しました。
この戦略的なリニューアルを実施した結果、効果は即座に数字として表れました。公開からわずか数ヶ月で、Webサイト経由の新規問い合わせ数は以前の約3倍に増加しました。特にスマートフォン経由でのアクセスにおけるコンバージョン率(CVR)が大幅に向上し、機会損失を防ぐことに成功しています。
さらに劇的だったのは採用面での変化です。リニューアル後、企業のビジョンに共感した求職者からの応募が急増し、それまで苦戦していたエンジニア職の採用に成功しました。応募者からは「Webサイトを見て、技術力の高さと社風の良さに惹かれた」という声が多く寄せられ、Webデザインが単なる情報の器ではなく、採用ブランディングの強力な武器となることが実証されました。
このように、ターゲットを明確にし、目的に応じた適切な情報設計とデザインを施すことで、Webサイトは24時間稼働する優秀な営業マン、そして採用担当者へと進化します。クライアントのビジネスを加速させるためには、美しさだけでなく「機能するデザイン」を提案することが何よりも重要なのです。

